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[情報誌Q vol.86特集③]芸術文化を支える、みんなの手

(2026年6月22日公開)

演劇やコンサートを楽しみに、多くの観客が訪れる劇場やホール。スポットライトに照らされた華やかな舞台は、たくさんの“手”によって支えられています。拍手を贈る手、裏方として支える手、芸術文化を愛する手…。今回は、その中から3つの“手”に着目してみました。


『文化を守り、つなげる手』
福岡県合唱連盟顧問 岩﨑洋一さんの記事はこちら


『才能を見出し、育む手』
北九州市の若い芸術家を育む会パドロニーニ 理事長 田中陽子さんの記事はこちら


『舞台を支える、観客からは見えない手』
北九州芸術劇場 舞台技術管理課 照明・映像係 大久保望さん

誰かの晴れの場を静かに支える

「舞台は総合芸術だから、『照明がきれいだった』と言われても褒め言葉には聞こえないんです」―そう語るのは、北九州芸術劇場の大久保望さん。吹奏楽やダンスの発表会などで、照明や映像に関わる舞台づくりを担っている。

北九州芸術劇場 舞台技術管理課 照明・映像係 大久保望さん
北九州芸術劇場 舞台技術管理課 照明・映像係 大久保望さん

照明の仕事は、見せたいものに光を当て、見せたくないものを闇に隠す。その“足し引き”によって舞台を支えている。市民利用の公演では、打ち合わせは一度きりということも多く、限られた情報をもとに明かりを組み立て、本番では出演者の立ち位置変更などにも瞬時に対応する。照明は操作した瞬間に観客へ届くわけではないため、「1拍前」から動くこともあるという。やりがいを尋ねると「自分が考えた明かりを大勢の人に見てもらえることと、時間の制約がある緊張感」と大久保さん。「わずかな瞬間の差で“ズレた”と思われる世界で、決まるとやっぱり面白い。別に誰からも褒められないけど…」と笑う。


見えない場所にこそ気を配る

本番を支えるために欠かせないのが、日頃からの整理整頓だ。道具が常にあるべき場所にあることで、「いつもと違う」と気づき、故障や怪我を防ぐことにつながるという。

機材を大切に扱い、日々の状態を確かめ続けることが、安全で質の高い舞台づくりにつながっている。
機材を大切に扱い、日々の状態を確かめ続けることが、安全で質の高い舞台づくりにつながっている。

「安全の基本は整理整頓なんです」と大久保さん。舞台上だけでなく、倉庫やバックヤードも常に整った状態を保つことを大切にしている。公演がない日でも、機材の点検や作業環境の確認を欠かさない。

また、劇場では安全に関する情報共有も日常的に行われている。同じ演目でも毎回同じスタッフが担当するわけではないため、過去に起きた事例や現場での気づきを共有し、次に生かしていくことが重要だという。

「過去の失敗を責めるためではなく、次に同じことが起きないようにするためなんです」。こうした舞台裏の積み重ねもまた、公演を支える大切な仕事の一つだ。

 

プロとしての厳しい視点を持つ一方で、子どもたちの発表会では、保護者の視点も忘れない。「わが子だけ暗く見えたら嫌でしょ?」そう言って、すべての子が明るく見えるよう気を配る。

誰かにとっての晴れの場を守るため、本番があっても無くても、その“手”は淡々と働き続けている。


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※この記事は情報誌『情報誌Q vol.86』2026年7月号の特集を元に編集・掲載しています。

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